グリーン誕生日SS
今日は俺の誕生日だ。
もちろん俺は? 大人だし? そんなことくらいで浮ついたりなんかしないけど?
みんなが祝いたいっていうんなら応えてやんなきゃな!
***
さてレッドに電話をかけてやるか。たまには生存確認しなきゃな。そう思ったのがたまたま今日なだけであって、別に誕生日とかそういうのは全くの無関係だ。
プルルルル────ピッ
「ようレッド!」
『どうせ誕生日でしょおめでとバイバイ』
ブツ! ツーツー
あ、あいつ⋯⋯! さよならバイバイみたいに言いやがって⋯⋯! もう二度と電話かけてやんねー!
***
今日は弟の誕生日だ。
あの子はジムリーダーについてからも、週に一度は必ず顔を出してくれる。しょっちゅうジムを抜け出しては周りに迷惑をかけているようだけど、ジムの人たちとは仲が良いようで、こんなバカやってたんだと帰る度に楽しそうに教えてくれる。
そして、あの子が絶対に逢いに来てくれる日が2回ある。私の誕生日と、あの子の誕生日だ。両親がおらず小さい頃から寂しい思いをさせてしまっていたから、あの子の誕生日は毎年めいっぱい甘やかしてあげようと決めている。
もうそろそろ、誕生日なんて忘れてた振りをして、あの子がこの家に帰ってくるだろう。
「ねーちゃんただいま!」
「おかえりなさい、グリーン」
***
「よー! ヒビキ! バトルしようぜ!」
「あっグリーンさん──すみません! 急いでるので!」
「コトネ!バトル──」
「ごめんなさい! ちょっとやんなきゃいけないことがあるんです!」
後輩が冷たい。ショックを受けかけたが俺は「ははーん」と思い至った。
あいつら、俺にサプライズパーティーを仕掛けようとしているな? 可愛いとこあるじゃないか。
ならば騙されてやるべきだろう。今からどんなリアクション取るか考えなければ。
しかし何もビーサプライズドしないまま夜を迎えた!!
あ、あれー!?
次の日の朝。
インターホンがなったので姉の代わりに出てみると──
「グリーンさんお誕生日おめでとうございまーす!」
クラッカーとともにヒビキとコトネがプレゼントを渡してくれた。
「おまえら──」
特に何もなかった昨日が堪えていたために感動は倍増だった。じーんと暖かいものが心に広がる。
「サンキュ。でもさ、俺の誕生日、昨日なんだけど」
「ええ!? レッドさんが今日って言ってましたよ!」
あ、あいつ────!!!
「そうか⋯⋯多分あいつが勘違いしてたんだろ。プレゼントありがとな!」
「レッド!! おまえヒビキ達に俺の誕生日わざと間違えて伝えたろ!!」
「──? ああ、サプライズしたいって言ってたから、次の日に祝った方がサプライズになるかと思って」
「そんな哀しいサプライズがあるか!!」
***
「よーマサキ!」
まあ流石に覚えてないだろうな、と思いつつもマサキの家へとやってきた。
「こんちは、グリーンくん──あ!!! 今日誕生日やんな!! おめでとう!!」
「え、お、覚えててくれたのか!?」
まさかの祝いの言葉に俺は胸が熱くなった。
「当たり前やん! ちゃんとプレゼントも用意しとるで!」
「マジ!? すげー嬉しい。なにくれんの?」
「えっとな⋯⋯」
マサキは少し言い淀んだ。
「そのう、夜やないと意味あらへんから夜にまた来てくれる?」
「夜? よく分かんねーけど、じゃあまた夜に来る! ねえちゃんとケーキ食べるからあんま長居できねぇけど⋯⋯」
「ああ、全然構わへんで!ナナミさんにもよろしゅう言っといてな」
夜じゃないと渡せないプレゼントってなんだろう? 俺は期待を募らせながらマサキの家を出た。
一方マサキは。
──やってもうたぁぁ! 手帳にもちゃんと書いとったのにすっかり忘れとったわ! グリーンくんの表情でとっさに思い出せたはええけど、どないしよ。プレゼントなんも用意しとらん⋯⋯。わいの誕生日のときプレゼント貰てもうたし渡さんわけにはいかんよなぁ。なんやねん夜やないと意味ないプレゼントって! 下手なナンパか! とにかく夜までになんか用意せな⋯⋯。
苦悩していた。
ハナダに花火が打ち上がるまで、あと九時間。
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