おまけ

「まさき⋯⋯」

「んー?」

「ねれない」


心も落ち着いてあとは寝るだけとなったのに、グリーンの目はパッチリと開いていた。


「しゃーないな⋯⋯なんか話でもしたろか?」

「はなし?」


マサキは自分のバッグをガサゴソと探った。妹用に買った絵本を一応持ってきていたのだ。


手元にあるのはトサキント姫、ちいさいイーブイちゃん、白いニドランと紫のニドラン⋯⋯全て女の子向けだ。


──絶対こういう類の話は興味ないやろなー!


マサキは無言で絵本をバッグに戻し、今までに読んだ本や読んでもらった本の記憶を辿って適当に話を作ることにした。


「えーと、グリーンが主人公の物語や」

「なにそれ。ききたい!」


取り敢えず、ぱっと思いついた『ポッポの恩返し』をベースにしつつノリでやってけばええやろ、と考えマサキは話し始めた。


「ある日、グリーンが草むらを歩いていると⋯⋯」

「くさむら入っちゃだめなんだぜ」


いきなりツッコミが入ってしまった。正直細かい所は気にしないで欲しいというのが本音だが、こういうのはある程度教育も踏まえた話にすべきなのかもしれない。


「んん、せやな⋯⋯ほならグリーンが町を歩いていると、町の隅に罠にかかったポッポがおりました」

「マサラタウンにポッポいない」

「ほんまは草むらおったけど罠にかかってもうてん。さあ、目の前に罠にかかって動けんくなっとるポッポおるで。どないする?」

「えー、たすける?」

「疑問形なん? ⋯⋯グリーンがポッポを助けて足の手当をしてやると、ポッポはじっとこちらを見てからお空へ飛んでいきました」


「それから何日か経ったある朝、玄関がピンポーンと鳴ったのでグリーンが扉を開けてみると──」

「だれかきても出ちゃだめってねーちゃんが」

「そ、そうなんや、しっかりしとるな⋯⋯ほなお姉さんが代わりに出てみると、そこにはピジョンがおりました」

「さっきのポッポだ」

「ふふふ、それはどうやろうな?」


ご指摘の通りさっきのポッポなわけだが、特に意味もなく誤魔化した。ピジョンがポッポの進化系だと説明する必要はないようだ。


「ピジョンはそこから動かないので、家で飼うことになりました」


「ピジョンとグリーンはすぐに仲良くなりました。どこへ行くにも、何をするにも一緒でした」

「おれそんなさみしがりじゃない」

「ピジョンが寂しがりやってん。ええやろ別に」


「グリーンは成長して、旅に出てもいい年になったので、ある日そのピジョンとマサラタウンを旅立つことにしました」

「ぼうけんのはじまりだな!」

「せやな。でもこの辺思い浮かばんからすっ飛ばすわ」

「なんで!! ききたい!!」

「まあまあ。いろいろあってグリーンはピジョンとめっちゃジムのバッジ集めまくって強なって世界一強いトレーナーになりました」

「おれすげーな!」

「せやな」


「グリーンが山の頂上から、今まで旅してきた街を見下ろしていると、ピジョンが言いました。実はわたしはあの時助けてもろたポッポです」

「ポケモンはにんげんのコトバしゃべんないんだぜ」

「この子は特別やから喋んねん」


「あなたのお陰でピジョンになれて、こうして恩返しすることができました。もうすぐ私はピジョットになります。そしたら私は自分の国に帰らなあきません。私は鳥王国の王子で、一人前になったら鳥王国に帰る約束なんです。ピジョンはそう言いました」

「えー、やだ!」


「あと一回バトルしたらピジョンはピジョットに進化します。さて、どないする?」

「シンカしたらかえっちゃうんだろ? ぜったいやだ!」

「でもな、ピジョンは帰りたいねん。君で言うところの、マサラタウンとお姉さんが待っとんねん。お姉さんはピジョンが帰ってこんくてめっちゃ寂しがっとるで」

「うう⋯⋯ん」


グリーンは真剣に考え込み始めた。今のうちにオチ考えな⋯⋯とマサキも真剣に考え始めた。


「⋯⋯⋯⋯ばとるする」

「最後のバトルでピジョンはピジョットに進化しました。立派な羽を大きく広げて言いました。ありがとう、あなたのお陰で一人前になりました。あなたと過ごした日々は一生忘れません。お元気で。ピジョットは羽ばたきました」

「⋯⋯⋯⋯」

「おひさまのような頭の毛をたなびかせて、どこまでもどこまでも、海の向こうへ飛んでいきました⋯⋯おしまい。もしかしたら、グリーンが次に会うポッポはこの子の子どもかもしれへんな」

「⋯⋯⋯⋯」


──うん、わいお話つくる天才かもしれへん。


適当に知っている話を繋げていっただけなのだが、結果的にかなり道徳的で良いお話になった気がする。あ、でも最後のやつは時系列的におかしなことなってまうな⋯⋯とマサキは脳内反省会を行いつつ、ちら、とグリーンの様子を伺いぎょっとした。


「お、おれ、さいしょにつかまえるポケモンぜったいポッポにする⋯⋯!」


──途中省略とかしてもうたのにめっちゃ感動してくれとるやん!


途中途中でひねくれたツッコミをしてきたが、こういう所は子どもらしいというか、純粋なところもあったようだ。


ほっこりとした気持ちで、マサキの腕を掴んで涙目で宣言するグリーンの頭をうんうんと撫でてやる。


「そんで、いちにんまえにして、いえにかえす⋯⋯!」

「あ、うん。あれやで、みんながみんな鳥王国帰るわけちゃうから⋯⋯ずっと傍に置いたって⋯⋯」


旅に出るときにはもうこの話なんて覚えてないだろうし、覚えていてもただの作り話だと理解している頃だろうが、マサキは少しだけ心配になった。


──小さい子に聞かせるお話作りってやっぱ難しいわ。



兄になれるのはまだまだ遠いようだ。




【初代時点での年齢設定(ほぼ捏造)】

グリーン(11)

・初代のあらすじではレッド11歳で、「同じ年、同じ成績、同じ身長」よりグリーンも11歳に。

※本来10歳から旅に出れるけど、御三家を二人に渡せる状態になるまで待ったため11歳になったと妄想。



ナナミ(21)

・初代だと名前が表示されない&会話が大人と子ども感ある(※個人的な印象です)

→レッド的には会うと優しくしてくれる近所のお姉さんくらいの関係だった?

→結構年齢差ありそう

→10歳で少しだけ旅に出たけど性に合わなくて、グリーンが生まれたあとはずっと家に居たという妄想から10歳差に

※若い時にコンテストで優勝して有名なコーディネーターになり、グリーンが旅に出てからはブリーダーになった。



マサキ(22)

・英語版マサキの名前はビルで多分ビル・ゲイツがモデル

→ビル・ゲイツの起業が19歳、高校くらいからコンピューターに興味もって企業に関わってたりしてた

→最近はデータ化して⋯⋯のセリフから、ポケモンのデータ化性質が解ったのは最近?

→ボックスが出来たのも最近?


という点から以下経歴妄想!

◎16歳

・科学が発展してるヤマブキにある高校に入学(リニアがまだ開通しておらずアクア号でカントーまで来てその後は寮暮らし)

・ちょくちょくシルフカンパニーに出入りしてバイトっぽいことしてた

・そこでたまたまオーキド博士と知り合う

◎19歳~20歳

・お預かりシステムの構想を練って開発へ→まわりの助けもあって起業(大学は中退)

※内容的に個人事業主よりも会社の方がいいだろうという判断

◎21歳

・ボックスが公共施設で利用されるように

・ロイヤリティやらなんやらで出した利益でアサギシティに家を持つ(家っていうか小屋だけど⋯⋯)

・そこで転送マシンの開発に取り掛かっていく。

◎22歳

・実験に失敗してポケモンとくっついてもうたんや

◎25歳

・たまには親孝行せんとな

(金銀でしれっとタイムマシンつくる)

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