それでも愛しく思うから僕は

「自分で好き勝手に動きたい? それとも俺に動いて欲しい? ヒビキの好きな方でいいぜ」


そう言いながらグリーンさんは己のシャツのボタンを外しながら耳元で囁く。


部屋に入った途端にこれだ。まったりする時間もなく、グリーンさんはこうして自分を売る。まるでこれだけが自分の存在意義とでも言わんばかりに。こうしないと捨てられるという強迫観念とともに。今に始まったことじゃない。それでも僕は嫌だった。別に繋がることが嫌なんじゃない。


そんなことしなくたって好きである事には変わりないと伝えたいんだ。伝わらないのがもどかしいんだ。


「今日は、やめません? ゆっくり過ごしたい気分なんです」


え、とグリーンさんは僕のその言葉に青ざめた。


「何でだよ、俺のこと飽きたのかよ。お前が望むなら何だってやってやるよ。そうだ、今日は俺が沢山奉仕するから、お前は何もしなくていいから、だから──」

「飽きたとかじゃないんです。グリーンさんと話したりまったりするのが好きなんです。たまには良いじゃないですか」


不安を残した表情のまま、諦めたようにグリーンさんは「解ったよ」と僕から離れた。


「そういやさ、お前のその敬語、やめないか? 俺はタメ口でいいって前から言ってるだろ」

「グリーンさんが僕のこと本当に好きになってくれたらやめます」


グリーンさんは黙り込んだ。当然だ。だってこの人が愛しているのは僕じゃなくて、自分を愛してくれる人間なんだから。


「なあ、お前は俺を好きなんだよな? お前は俺を見捨てないよな?」


不安に溺れて必死に藻掻くグリーンさんを愛しく感じる僕もまた、狂っているんだろう、と思う。

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