PROLOGUE
どれだけバッジを集めても、チャンピオンになったとしても、旅を続けたとしても。いつかそこには終わりがある。
もちろん命あるものは誰だって、死の運命を回避することはできない。だけど僕が恐れているのはそういった物理的な生命の停止じゃなく──終わりを迎えたあと、今までに歩んできた人生の軌跡がまるで無かったかのように忘れ去られてしまうことだ。
だからこの世界を創った。
欠陥だらけで、曖昧で、永遠と続く不安定な世界。無理やり作り出した第三者。
この世界に長いこと巻き込んでしまっているあるトレーナーとは、世界がループする度にバトルをしているけど、向こうはこちらを信用していないらしい。
立場は同じはずで、この気持ちは誰より理解できるだろうに、この世界の終焉を願っているようだ。
この世界を創っているのは僕なのに、上手くコントロールできないのが厄介だ。そもそもこの世界だって、どんどん不安定になっていっているのに。
今日も誰かがシロガネ山に迷い込む。
ほとんどの人間はこの世界を身体が拒絶してしまうけど、今回はすんなりとこの世界に入ってしまった。よく知っている相手だった。
ああ、彼がこの場所に来てくれるのなら、少しは楽しくなりそうだ。
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